鈴木 光司「仄暗い水の底から」

鈴木光司

作品:仄暗い水の底から

「浮遊する水」が2002年に中田秀夫監督、黒木瞳主演で映画化され、2003年のジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でグランプリを受賞し、2005年にはハリウッド版のリメイク「ダーク・ウォーター」も制作されました。

鈴木光司

著者:鈴木 光司

出版社:1997年9月1日 株式会社KADOKAWA(角川書店)

あらすじ

巨大都市の欲望、ゴミ、汚物、夢、憎悪を呑み尽くす巨大な「水たまり」東京湾・・・
この危うい領域に浮かび上がっては沈んでいく奇妙で不可思議な出来事。
本当はみんな知っている、気付いている。
海が邪悪に染まってしまった事を・・・

【収録内容】
「浮遊する水」
「孤島」
「漂流船」
「穴ぐら」
「夢の島クルーズ」
「ウォーター・カラー」
「海に沈む森」

感想

リング」、「らせん」で有名な鈴木光司氏の短編集ですね。
それぞれは独立した話なので、どれから読んでも「おどろおどろしい感じ」が味わえます。

最初に老婆が「水にまつわる怖い話」を孫にするために色々と考える(思い出す?)ところから始まります。

・子どもが行方不明になったマンションで怪奇現象に悩まされる主婦の話。
・友人が死ぬ間際、とんでもない事を明かしたために東京湾へ出向く話。
・舞台の裏方として参加してる劇団員が体験する水にまつわる不思議な話。

など、共通点は「」で、「給水塔」、「東京湾」、「ビルの洗面台」、「洞窟内の地下水」・・・
流れる水」を見ても何とも思わないし、むしろ清々しい気分になるのに、「淀んだ水」と言うだけで怖いイメージになるのは何故でしょうね。

人間の潜在意識に何かあるんでしょうか。

この作品に収録されている「浮遊する水」は映画化されましたが、原作では拍子抜けするほど短いです。
映画では「母親が幽霊と一緒に行ってしまう」と言う、何だか不思議な終わり方でしたが、小説はもっと現実的に「娘と家を出ていく」展開でした。

何かビックリするような演出がある訳ではないんですが、各話とも徐々に追い詰められていく恐怖が味わえます。

個人的にガッカリしたのは、全編通して幽霊の類が一切出てこなかった事でしょうか。

「絶対なんかいる!」
「この展開は死体ぐらい出てくる!」
「扉を開けちゃダメだ!」

と勝手な期待をしたのに、見事に全部スルーされる感じですね。

登場人物それぞれの視点は本当にバラバラで、良い意味で飽きずに読み進められました。
もちろん降り掛かってくる災難もバラバラです。

本編はハッピーエンドなんてほぼないんですが、最後の最後にちょっとだけホッコリするシーンが出てきます。
ホッコリすると共に「水は循環してるんだなぁ」と、改めて気付かされました。

と言う事は、この登場人物たちが体験した事は、水を通して私達にも降りかかってくるかもしれない・・・

短編なので完結していない話がほとんどですですが、「切なくてやるせない、でも後味は悪くない」、そんな作品です。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA