伊坂 幸太郎「AX(アックス)」

伊坂幸太郎

作品:AX(アックス)

2017年に第6回静岡書店大賞(小説部門)受賞、「フタバベストセレクション2017」(フタバ図書)第1位、そして2018年に本屋大賞にノミネートされた作品です。

伊坂幸太郎

著者:伊坂 幸太郎

出版社:2017年7月28日 株式会社KADOKAWA(角川書店)

伊坂幸太郎

あらすじ

引き受けた仕事は完璧にこなす腕利きの殺し屋「」。
実生活では文房具メーカーの営業社員、そして妻と息子(高校生)の3人家族。
恐妻家の奥さんに気を遣う、ちょっと変わった殺し屋が遭遇する出来事と、その息子の活躍を描く。
伊坂幸太郎氏の大人気「殺し屋シリーズ」最新作で、書き下ろし2編を加えた全5編の連作集。

【収録内容】
AX「小説 野生時代」2012年1月号
BEE「ほっこりミステリー」宝島社文庫 2014年3月刊
Crayon「小説 野生時代」2014年2月号
EXIT(書き下ろし)
FINE(書き下ろし)

感想

殺し屋」というダークな設定にも拘らず、コミカルな人柄をかもし出す「」。

エンターテイメント小説でありながら、ただの娯楽で終わらないのが伊坂幸太郎氏の小説ですね。
何気ない会話の中に著者のメッセージが込められていて、それを見つけ出すのも読書の楽しみの1つです。

今回、興味を引かれたところは次の会話です。

定期的に神様はリセットするんだよ。断捨離みたいなもんだろ。部屋がごちゃごちゃしてきたら、全部捨ててやり直す。で、また荷物が増えて、収拾がつかなくなる。地球が出来てから、多分ずっとそうだろうな

整理整頓が苦手な神様

伊坂幸太郎氏は仙台に住んでいるので、これは東日本大震災の事を指していると思われます。
これまでの全ての自然災害とも思われますが、自然災害に、一体何度人間は泣かされてきたのでしょう。

特にここの数年は地震と台風で多くの人が亡くなったり、怪我を負ったり、本当に悲しい事が続きました。
震災後に「海のバカヤロー!」と叫ぶCMがありましたが、その気持ち、良く解ります。

しかし、海を、天を恨んだところでどうしようもない、誰が悪い訳でもない・・・
不可抗力と言う、どこに住んでいても訪れる、仕方のない事と受け入れるしかないんですよね。
そこをユーモアを交えて「神様の断捨離」と表現している伊坂幸太郎氏の大らかさに救われる気がします。

」は息子に「できるだけフェアでいろ」と諭します。
どうしたら良いの?』と問う息子に

相手の名前が変だと馬鹿にしたり、顔や体が変だと馬鹿にするのはやめろ。そいつの努力では変えられないからだ。どうにもならない事を攻撃しても、フェアとは言えない

これも、「フェアでいる事、卑怯な事はするな」と言う教訓ですが、なぜか説教くさく感じないんですよね。
殺し屋のお前が言うなよ!」と突っ込みたくなるんですが・・・

当然、殺し屋のお話ですから、ターゲットと争い、殺してしまう場面もあります。
だけど、可笑しさがある・・・

朝、奥さんと顔を合わせたら「今日も1日申し訳ありませんでした」と、で奥さんの顔色をうかがう殺し屋。
それを見てあきれる息子。

最後は家族を想うお互いの気持ちが現れる事によって、ホッとするようなニヤッとするような、読後感の良い作品でした。




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