内田 康夫「他殺の効用」

内田康夫

作品:他殺の効用

浅見光彦シリーズ2編を含む、全5編を収録した傑作短編集。
西村京太郎山村美紗と共に、旅情ミステリー作家の大御所中の大御所である内田康夫氏の代表作ですね。

浅見光彦シリーズと言うと、やはりテレビドラマを観て知った人も多いのではないでしょうか。
辰巳琢郎、沢村一樹、速水もこみち、平岡祐太などの俳優が演じています。

事あるごとに事件に遭遇し、そして巻き込まれ、警察に事情を聴かれている時に地元警察署の刑事が光彦の家族構成を調査しようとして、兄が警察庁刑事局長だと知った途端、手の平を返したように警察、刑事達の態度が変わる・・・このお約束が大好きです。

内田康夫

著者:内田 康夫

出版社:2007年9月1日 株式会社祥伝社

あらすじ

本業はルポライターだが、刑事顔負けの洞察力と推理力を持つ浅見光彦は、母の俳句仲間である久永という男性から「勤務先の社長の自殺について調べてほしい」との依頼を受ける。
社長には莫大な生命保険金がかけられており、保険の加入から1年が経過する日の2日前の自殺と言う事から、他殺を疑ったためだった。
そして、事件を推理するうちに、光彦は驚愕の真相を知る事となる・・・

感想

生命保険と言うのは何が何でも保険金が下りる訳ではなく、死亡時の時期や条件によっては保険金が支払われない事例もありますね。
久永の勤務先の社長には巨額な生命保険がかけられていましたが、自殺したのが保険加入から1年が経過する2日前なので、社長が自殺なら保険金は支払われません。
浅見への調査依頼は「誰かが社長を殺したに違いない」と言う怨恨を疑った依頼と言うよりは、「金銭的に自殺であるはずがない」と言う、死ですら損得を計算するものかと感じさせるものです。

このミステリーの面白さは、単なる真相究明の過程を堪能するだけではなく、事件そのものを仕組んだ人間の先見の眼と、狡猾と言っては語弊があるかもしれませんが、「こんな形で周囲を欺く方法があったのか」と感心する物語になっているところですね。

また、この事件は真相を解明する事にのみ興味があり、犯人をどうこう出来ない、警察でも裁判官でもない、あくまでも「民間人」の浅見光彦だからこそ解決出来た事件だと思います。

光彦は他の事件でも、例え犯人を突き止めても、その犯人に対して強引に自首を勧めるような事はせずに警察の捜査に協力したり、助言したり、依頼人の依頼通りに犯人を突き止めても、その犯人のその後の人生に関わるような事はしません。

自分に依頼が来た理由、そして自分でないといけなかった理由・・・

それらを知った時、はたして光彦はどう思ったのか。
その辺りがほとんど書かれておらず、「読者のご想像にお任せします」と言う終わり方が、何ともミステリアスですね。

そもそもタイトルの「他殺の効用」からして、実はトリックの大方を語っているような作品ですが、それは読後に感じる事であり、読むまではやはり何が効用なのかは解りません。

作品としては短編ですが、「あ!」と声を上げたくなる結末が癖になるミステリーです。




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