和久 峻三「魔弾の射手」

和久峻三

作品:魔弾の射手

赤かぶ検事一家総出演の豪華書下ろしです。

赤かぶ検事」と言えば、テレビドラマの「赤かぶ検事奮戦記」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
1980年から1992年まではフランキー堺、1994年から2005年までは橋爪功、そして2009年からは中村梅雀が主演を務めています。

和久峻三

著者:和久 峻三

出版社:1998年2月20日 株式会社光文社

あらすじ

実業家の浦上修介が妻の秋津子に暴力を振るったとされるDV事件が訴訟に発展し、傷害事件として裁判になる。
その公判を担当した「けん玉判事補」である柊正雄は、高山への1人旅の最中に悪天候に見舞われ、危うく遭難しそうになる。
その時、偶然にも通り掛かり、彼を助けてくれた車のドライバーは、公判のDV被害者の秋津子だった。
腹を割って話すうちに惹かれ合う2人。
事件関係者との恋愛は御法度・・・タブーと法律家としての葛藤の中、正雄は秋津子を守る決意をする。
しかし、秋津子から「夫を射殺した」と告げられ・・・
はたして恋と事件の行方は?
驚愕の殺人トリックとは?

感想

司法試験に合格したエリートではなく、検察事務官から叩き上げで検事になった赤かぶ検事こと柊茂が一癖も二癖あるエリート弁護士と、苦節数十年の経験と法律知識を駆使して対決する様子は、本当に見ていて痛快です。
素人同然の探偵が犯人を崖に追い詰め、長々とトリックや何やらを説明し、最後に犯人が自白して泣き崩れる・・・と言うような使い古された推理ものとは一線を画していますね。
そして、実の娘であり、弁護士・葉子との法廷親子対決も見所の1つです。

魔弾の射手」は、「赤かぶ検事検事シリーズ」の主人公である柊茂の息子・正雄を主役とした推理小説です。
判事補の正雄、弁護士で姉の葉子、物語の終盤には赤かぶ検事夫妻も顔を出すと言う非常にファンサービスに富んだ作品ですね。

著者の和久峻三氏が弁護士資格所有者と言う事もあり、悪徳弁護士が違法ギリギリのところで儲ける手口や、正雄が秋津子に説明する法的解釈が非常に専門的で、プロにしか知りえないであろう知識が豊富な点も非常に勉強になります。

何となくけん玉ばかりしている正雄は、天才肌だけど掴みどころがないと言う印象です。
しかし、自分が受け持った公判の被害者女性、しかも人妻との情熱的な恋愛や、愛のためなら判事補という自分の職を辞して弁護士に転職する行動力など、大胆ながらも法廷での他を圧倒する推理力は冷静極まりなく、女性にとっては理想的な男性として描かれています。

最近はいかなる理由があっても既婚者との恋愛は良い印象を持たれず、「略奪婚」という言われ方をされ、どうも歓迎されない風潮がありますが、金銭的な負い目から離婚に応じてもらえず、暴力に耐え続ける女性を離婚させて幸せにしてあげたいと思う気持ち、同時に自分を守ってくれる男性と幸せになりたいと思う女性の気持ちは、「略奪」などと言う言葉で批判されて良いのでしょうか?

この作品を読んで、全ての不倫と呼ばれている事例が、本当に間違った恋愛なのか疑問を感じずにはいられません。
少なくとも正雄の愛情は間違っていないと感じるし、この本を読んだ人は誰しも、「DV男の夫の言い分こそ、まかり通るものではない」と強く憤るのではないでしょうか。

背徳的な気持ちを持ちつつも、法律的知識を駆使して真実に迫る正雄の正義感には圧倒されます。

やはりあの赤かぶ検事の血を引いているのだ」と改めて思う1冊ですね。




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