西村 京太郎「石狩川殺人事件」

西村京太郎

作品:石狩川殺人事件

西村京太郎と言えば十津川警部十津川警部と言えば西村京太郎氏ですね。

「月曜名作劇場」、「火曜ミステリー劇場」、「土曜ワイド劇場」、「女と愛とミステリー」、「ザ・サスペンス」。
そして、テレビ朝日、TBS、日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京などなど、ありとあらゆるところで放送されています。

十津川警部を演じた俳優も高橋英樹、宝田明、若林豪、渡瀬恒彦、内藤剛志、高嶋政伸、萩原健一、神田正輝など、超一流ばかりですね。

私はその中でも、渡瀬恒彦氏演じる十津川警部が一番好きでした。
相棒の「カメさん」こと亀井刑事はもちろん伊東四朗氏。

ああ、渡瀬恒彦さん・・・本当に早すぎる死です。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

西村京太郎

著者:西村 京太郎

出版社:1999年2月10日 株式会社文藝春秋

あらすじ

「最上川殺人事件」、「日高川殺人事件」、「長良川殺人事件」、そして「石狩川殺人事件」の4つの川をモチーフにした短編集。

コンビニエンスストア店員が中年男性に射殺される事件が起こった。
警視庁の十津川警部は、金銭目的の強盗とは思えぬ不可解な殺人事件の被害者の過去から、ある人物を特定する。
被害者が犯した過去の罪と、その罪に関わった人間に私的制裁を続ける犯人。
罪に関わった人間は残り2人・・・
人の殺人による制裁を止めるべく、十津川警部と亀井刑事は北海道、層雲峡へと向かう。
十津川警部の推理が冴える、トラベルミステリー傑作集。

感想

この作品は犯人を推理するミステリーではなく、犯人のこれ以上の犯行を止める過程が描かれた異色作です。

3人の未成年が抵抗出来ない障害者の女性に乱暴し、女性は自殺か他殺か事故死か分からない状態で死亡します。
未成年だと性犯罪も量刑が軽く、ましてや女性の死が死因不明な場合、犯人達はその死の責任までは問われません。

こう言ったやるせなさは、被害者女性を取り巻く人間としては「未成年であれば何をしても良いのか」と言う義憤に駆られます。
被害女性は不幸にも家族も死亡しており、彼女の仇討をしていたのは恋人でも親戚でも友達でもない、彼女に生きる希望を与えてもらった中年男性でした。

妻に逃げられ、仕事を失い、自暴自棄になっていた男性が、だらだらと飲んだくれた生活をする中、公園で少女に似顔絵を描いてもらい、その交流から希望を見出す、彼女に恥じない人間になろうと決意した矢先の彼女の死。

元々フランス料理店のオーナーだった男性は、おそらく彼女に自分の作った料理を食べてもらいたい、店を出して再起したい・・・
恋愛感情と言うよりは、父が娘に恥じない生き方をしようと決意するような純粋な人間愛を持っていたのでしょう。
そう言った希望が性犯罪によって奪われる・・・

暴行と同時に彼女が死ねば、その死は暴行と因果関係があると思うのが普通であり、こう言った恋愛ともつかぬ、理屈ではない愛情による犯行が取り上げられた作品もなかなか珍しいのではないでしょうか。

この石狩川殺人事件に限っては、「相手がどんな凶悪犯だろうと、どんな犯罪にも私刑でもって制裁を加えてはならない」と言う理屈は理解していても、感情で理解できません。
ターゲットにされた3人の若者の方が、犯人の中年男性よりずっと悪党であると感じます。

十津川警部の行動も、悪しき殺人鬼を追うと言うよりは、今回ばかりは制裁の仕方を誤った正義の人を助けたいと言う気持ちが色濃く出ています。
中年男性を終始「さん」付けの敬称で呼び、狙われた青年に辛辣な言葉を浴びせている事からも、それは明らかです。

そして、結末は余りに切ない。
未成年の犯罪の罰則の在り方について、世間に訴える力を持つ作品だと思います。




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