乙一「ZOO」

乙一

作品:ZOO

注目を集める若手ナンバーワン、乙一氏の魅力が詰まった短編集。
2004年第17回山本周五郎賞候補、そして2003年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門8位の作品です。

乙一

著者:乙一

出版社:2003年6月26日 株式会社集英社

あらすじ

毎日届く恋人の腐乱死体の写真・・・
彼女を殺したのは一体誰か。
犯人探し」に奔走する男を描く表題作「ZOO」の他、書き下ろし新作を含む10編収録。

【収録内容】
・カザリとヨーコ
・血液を探せ!
・陽だまりの詩
・SO-far そ・ふぁー
・冷たい森の白い家
・Closet
・神の言葉
・ZOO
・SEVEN ROOMS
・落ちる飛行機の中で

感想

乙一氏の真骨頂を味わえるホラー短編集。
1つ1つの物語が短編なのでとても読みやすく、そしてハズレのない作品。

どの話も目の前に映像が浮かぶようなリアルな描写が恐ろしく、読み始めると止まらない面白さがあります。
グロテスクなシーンや残虐シーンがたくさん登場するので、そう言ったものが苦手な方には厳しいですが、「カザリとヨーコ」のある意味爽快感すらあるオチや、残虐ながらも姉弟愛に溢れた作品の「SEVEN ROOMS」など、ただ怖いだけでは終わらない所が魅力的な作品です。

特にあっと驚かされ、読んだ後に何年経っても心から離れなかった作品は「SEVEN ROOMS」です。
姉と弟が突然何者かにコンクリートで出来た溝のある部屋に閉じ込められ、小さな弟がその溝を通って閉じ込められた訳を探ろうと隣の部屋へと移動するのですが、そこは猟奇的な殺人犯が一部屋ずつ拉致した人間を殺害するために存在する施設だったと言う事が分かります。

もうこの部分だけで完全に心を掴まれてしまいましたね。

ゾワゾワとしてまるで映画を観ているように、暗くジメジメとした部屋の空気が感じられます。
そして何より自分に置き換えて考えてしまい、2人の絶望が自分の絶望のように感じ、どうにか2人には生き延びてほしいと強く願いながら読みました。

ただ残虐なシーンをリアルに描くだけでなく、そこに人間の心理や人間愛が絡むのが乙一氏の作家としての素晴らしさや魅力だなと、改めて感じる事が出来ます。

姉が弟をその部屋から逃がすための唯一の決断がとても勇気溢れるもので、不覚にも感動してしまいました。
予想していたオチとは違い、そこがまた悔しくもあり、驚かされた点でもあります。

決して胸がすっとするような話ではなく、気が重い終わり方ではありましたが、それでもどこか胸を打つ所もあり、この残酷な話に感動的な部分を折り込む手腕に驚かされます。
他の話も、それぞれ残酷さにユーモア、そして感動が色付けされていて、単なるホラーではなく、いつまでも記憶に残る作品ばかりでした。




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